同一労働同一賃金とは?派遣で働く人が押さえたい基礎と対応ポイント
働き方改革の一環として2020年に施行された「同一労働同一賃金」ですが、「派遣社員にどのような影響があるのか知りたい」という方もいるでしょう。
この記事では、同一労働同一賃金の概要や派遣社員への影響、メリット・デメリットについて紹介します。
同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金の概要や規定される制度について紹介します。
同一労働同一賃金が施行された背景
同一労働同一賃金とは、「人種や国籍、性別、雇用形態などに関係なく、同一の仕事をする労働者には同一水準の賃金や待遇が支払われるべきである」という考え方です。
これまで日本では、正社員と非正規雇用労働者の間に、仕事内容が同じであっても賃金や手当、福利厚生などに差が生じるケースが見られました。こうした格差を是正し、多様な働き方を選択できる社会を実現するため、働き方改革の一環として同一労働同一賃金の導入が進められてきました。
制度は大企業を対象に2020年4月から施行され、2021年4月1日からは中小企業にも適用が拡大されています。有期雇用労働者やパートタイム労働者、派遣労働者も対象となっており、派遣で働く人にとっても重要な制度です。
同一労働同一賃金による3つの規定
同一労働同一賃金では、主に以下の3つの規定が設けられています。
不合理な待遇差の禁止
仕事内容や責任の重さ、配置の変更範囲などが同じであるにもかかわらず、雇用形態を理由に賃金や手当、福利厚生に差を設けることは認められません。
労働者の待遇に関する説明義務の強化
事業主は、賃金や各種手当の内容、正社員との違いについて、労働者から求められた場合に分かりやすく説明する義務があります。
行政による指導や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
待遇に関するトラブルが生じた際、裁判に頼らず解決できる仕組みが整えられ、労働者が声を上げやすい環境づくりが進められています。
同一労働同一賃金では、このような待遇差の抑制と監視、指導を行えるようなルールが設けられています。各規定や制度としての詳細については、以下をご確認ください。
出典:厚生労働省ホームページ 同一労働同一賃金特集ページ
同一労働同一賃金を実現する2つの方式

派遣労働者における同一労働同一賃金は、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つの方法のいずれかによって実現されます。派遣会社は、どちらの方式を採用しているかを明確にし、派遣労働者へ説明する必要があります。
派遣先均等・均衡方式とは?
派遣先均等・均衡方式とは、派遣労働者の待遇を、派遣先企業で働く正社員や直接雇用の従業員と比較し、同じ業務内容であれば同等、または均衡の取れた待遇とする方式です。賃金や手当、福利厚生などを、派遣先の従業員を基準に決定します。
特徴
派遣先で働く正社員と待遇水準をそろえるため、仕事内容に見合った賃金を受け取りやすい点がメリットです。同じ職場で働く人との待遇差が分かりやすく、不公平感を感じにくいのも特徴といえます。
注意点
派遣先ごとに待遇基準が異なるため、派遣先によって賃金や条件に差が出やすい点がデメリットです。また、派遣先の賃金制度が複雑な場合、待遇の比較対象の設定も複雑となることもあります。
労使協定方式とは?
労使協定方式とは、派遣会社と派遣労働者の組合(または代表者)との間で締結した労使協定に基づき、賃金や待遇を決定する方式です。国が定める「一般労働者の平均的な賃金水準」と同等以上となるよう、賃金額や昇給ルールが設定されます。
特徴
派遣先が変わっても、一定の基準に基づいた賃金が確保されやすい点がメリットです。賃金テーブルや昇給の仕組みが明確になっているため、将来的な収入の見通しを立てやすいという利点もあります。
注意点
派遣先の正社員と比べた場合、必ずしも同水準の待遇になるとは限らない点に注意が必要です。また、労使協定の内容によっては、派遣労働者自身が条件を把握しにくいケースがあるため、細かな条件は事前に確認しておきましょう。
「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の詳細については以下のサイトも参照してみてください。
出典:厚生労働省ホームページ 派遣労働者の同一労働同一賃金について 
派遣社員への影響は?同一労働同一賃金のメリット・デメリット

同一労働同一賃金の導入は、派遣社員の働き方や待遇にさまざまな影響を与えています。ここでは、派遣社員の視点から見た主なメリット・デメリットを整理します。
メリット
給与や手当の改善可能性
同一労働同一賃金により、仕事内容や責任の重さが同じであれば、雇用形態を理由とした賃金や手当の差は認められにくくなりました。その結果、派遣社員でも正社員と同水準、またはそれに近い給与・手当が支払われるケースが増え、待遇改善につながる可能性があります。
不公平感の解消と待遇の透明性向上
待遇に関する説明義務が強化されたことで、賃金や福利厚生の決まり方が以前よりも明確になっています。派遣社員自身が待遇の根拠を理解しやすくなり、職場内での不公平感の解消や納得感の向上が期待できます。
長期的なキャリア形成支援
労使協定方式では、昇給ルールや教育訓練の実施が明確に定められることが多く、スキルアップやキャリア形成を見据えた働き方がしやすくなります。安定した条件のもとで経験を積める点は、派遣社員にとって大きなメリットです
デメリット
同一労働同一賃金により、一部の企業では人件費や運用コストの見直しが進んでいます。この影響を受け、派遣社員の募集形態を変化させる企業も出てきています。ただ、人員配置の適正化によって「安定して働ける環境が整った」などの利点が生まれたケースもあるため、働く側にとってはメリットにもなりえます。
このように、同一労働同一賃金は派遣労働者にメリットが多い制度といえます。「人件費や運用コストの見直し」といった間接的なデメリットはあるものの、以前よりも待遇面や働きやすさが向上していると考えられるでしょう。
求人応募前にチェックすべきポイントは?

同一労働同一賃金の考え方を正しく理解し、納得できる条件で働くためには、求人応募前の確認が欠かせません。以下のポイントを意識して情報をチェックしましょう。
同一労働同一賃金に基づく待遇説明があるか
求人票や職場見学、面談の場で、「同一労働同一賃金への対応内容」がきちんと説明されているかを確認することが重要です。正社員との待遇差について、曖昧な表現ではなく、どの点が同じで、どの点に違いがあるのかが具体的に示されているかをチェックしましょう。また、派遣会社から賃金や手当の決定理由、処遇の考え方が明確に説明されているかも大切なポイントです。
給与・手当・福利厚生の比較条件と説明の有無
基本給や交通費、賞与、各種手当について、支給の有無や条件が具体的に説明されているかを確認しましょう。正社員と比較する際は、比較の対象(業務内容・待遇など)を明確にすることが大切です。あわせて、有給休暇、教育制度、社内サービスなど、福利厚生の適用範囲がどこまで及ぶのかも事前に把握しておきましょう。
派遣先/派遣元のどちらで待遇判断されているか
派遣の待遇は、派遣先基準の「均等・均衡方式」なのか、派遣元基準の「労使協定方式」なのかによって決まり方が異なります。どの方式で賃金や手当が決定されているのかを事前に確認し、自分が理解した内容と契約条件が一致しているかを面談時にしっかり確認しましょう。契約書や就業条件明示書の内容と、実際に説明された待遇に相違がないかをチェックすることも重要です。
まとめ
同一労働同一賃金は、雇用形態による不合理な待遇差をなくすために導入された制度で、派遣社員も対象となります。労働者側にメリットが多い制度ですが、その恩恵をしっかり受けるには、制度の内容や適用範囲を把握しておく必要があります。「どんなところをチェックすべきかわからない」という方は、今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。